天然の漆で艶と深みを添え、神前の光を思わせる荘厳さを生み出します。
世界の婚礼衣裳のなかでも、日本の「友禅」は最も格式高い芸術といわれます。秋山 章の打掛は、下絵から仕立てまでおよそ800日。本漆・本金彩、金箔に螺鈿をまとわせる特別な技を尽くし、洗練された吉祥文様と祝いの色が出逢って、一着がやがて一幅の絵となる——もはや衣裳の域を超えた芸術作品です。
純白の絹を吉祥色で染め上げ、その上に金と漆と貝の輝きを宿す。秋山作品を「衣裳」から「絵画」へと押し上げるのは、何層にも重ねられた手描き友禅ならではの加飾技法です。
天然の漆で艶と深みを添え、神前の光を思わせる荘厳さを生み出します。
金箔・砂子・切箔を柄ごとに切り分け、平面の生地に圧倒的な奥行きを与えます。
貝の内側のきらめきを意匠に宿す、繊細な柄ほど手間を惜しまぬ特別な技法。
絹糸と金糸の駒縫いで、染めや金彩だけでは届かない立体と豪華さを追います。
儀式の衣裳は、白い絹から色を立ち上げる「後染め」でこそ格を宿す。その約束を守り抜く、主な工程をたどります。
水で消える露草の青花汁で、白生地に伝統の輪郭を一筆ずつ写し取ります。
輪郭に沿って糊を細く絞り、色が混じらぬよう備える。友禅特有の白い線が生まれます。
糸目の内側へ、隣り合う色が混ざらぬよう一色ずつ。白抜きの文様に華やぎが宿ります。
柄ごとに加飾を切り分け、漆・砂子・螺鈿を重ねて、格調高い立体感を与えます。
熟練の和裁士が文様を合わせ一針ずつ。900日の時を経て、世界に一着が誕生します。
御祓乃無垢 — Ohharai Muku儀式の白から、
制作中、京都・上賀茂神社にてお祓いを受けた作品
祝いの色を立ち上げる。
1931年、山梨県生まれ。京都で染色工芸の真髄を学び、1954年に婚礼衣裳の制作を本格始動。以来半世紀以上にわたり、日本の伝統美の象徴である花嫁衣裳に情熱を注ぎ続けてきました。
その作品は衣裳の枠を超え、芸術品として高く評価されています。郷土美術館での特別展や、平和への祈りを込めたKIMONOプロジェクトでの振袖制作はNHKワールドを通じ世界へ。2021年、90歳を節目に作家活動を退きましたが、守り育てた技と精神は、日本の伝統工芸界の至宝として受け継がれています。